Archipelagoは、海上コンテナのモジュールに合わせてプロダクト化=量産することで、移動・品質の安定・工期短縮を可能にした、あたらしい建築の選択肢です。
車のような » 動いて変形する建築「Archipelago」は、組み合わせ次第でさまざまな用途になります。住宅を一品生産で建設するのではなく、工場で大量生産する「プロダクト」としてつくることで、安心で、費用が明快で、研究開発が続けられるなど、さまざまなメリットがあるそうです。「Archipelago」がプロダクトであることのメリットについて、デザインした建築家・寺田雅史に話を聞きました。
「Archipelago」がプロダクトであることのメリット
寺田|プロダクトは、直訳すれば「製品」です。一般的に住宅は一品生産。注文住宅の場合、建築家がお客さまの暮らしの要望を聞き、設計して、世界にひとつだけの住宅ができます。一方で、プロダクト住宅である「Archipelago」は、構造や寸法、内装、設備などがすでに計画されていて、工場で大量生産されます。自動車のつくられ方を想像してみてください。その住宅版です。
寺田|ハウスメーカーでは、建材を工場で生産し、それを現場で組み立てて住宅になりますが、Archipelagoはひとつの部屋のユニットをすべて工場で生産しています。工場から出荷される段階で、すでに住宅なんですね。
寺田|大きく分けて、つぎの4つがあげられます。
・ メリット1|簡単・安心
・ メリット2|金額設定が明瞭
・ メリット3|複雑な造形にしても価格が変わらない
・ メリット4|研究開発が続くからつねに最新
それぞれ詳しく見ていきましょう。
プロダクト住宅Archipelagoは工場生産だから安心
寺田|そのとおりです。そのうえ、製造されたArchipelagoは現場でジョイントするだけです。一般的な木造の住宅の安全性は、建設する職人さんの技術によって左右されてしまうのですが、昨今では優秀な職人さんも減っていて、技術力も低下していると言われています。Archipelagoなら、かんたんに取り付けるだけなので、高い施工精度で建設することができるんです。もちろん、構造の専門家とコラボレーションしていますので、建物の耐震性能も安心です。
寺田|自動車を買うときは、まず試乗してみますよね。なぜかというと、試乗した自動車とまったく同じ性能の自動車を買うことができるからです。Archipelagoも同じように工場で製造されているので、試乗ならぬ、試住ができます。
寺田|住宅は3回建てないと納得しないとよく言われます。Archipelagoなら1度建てたあと気に入らなければ動かせばいいだけですし、建物の性能にしても、すでに工場で何百回とつくられたものなので、建ててみたら設計ミスで雨漏りが…なんてことはありません。実物を見てから、実物に住んでみてから購入できるので、安心なんです。
Archipelagoはプロダクトだから金額が決まっている
寺田|一般的な住宅のつくられ方を大まかに言えば、まず敷地に合わせて建築家が設計し、その図面をもとにいくつもの部材を組み合わせ、職人さんが施工して完成します。ここでそれぞれ、設計料、材料費、施工費が発生します。
寺田|敷地や建物の形が複雑だったりすれば建てるのがむずかしいので、設計料や施工費が高くなる傾向がありますし、建材や設備のグレード、構造の種類が変われば費用も変わります。
寺田|Archipelagoは、居室スペース「ico」のひとつのユニット(約14.4㎡)は298万円です。この金額は、どのような場所に建てても、変わりません。
ico | 居室スペース | 298万円 |
sanita | 水回りスペース | 468万円 |
寺田|Archipelagoをいくつ組み合わせるか、その数だけで価格が決まります。しかも、すでに設計されたユニットを組み合わせるだけなので、設計や施工に時間がかかりませんし、設計料もかかりません(既存プランから選んだ場合)。
Archipelagoは複雑な形でも価格が変わらない
寺田|さきほど、Archipelagoは組み合わせるユニットの数だけで価格が決まると言いました。このことが、3つ目のメリット「複雑な造形にしても価格が変わらない」につながります。
寺田|Archipelagoはユニットの数で価格が決まります。そして、いわゆるコンテナ建築は基本的に同じ方向にしか積み上げることできないのですが、Archipelagoは直交方向に積み上げることができます。Archipelagoはこのことで特許も取得しました。いわゆるコンテナ建築は、基本的に真上に同じ方向に積み上げることしかできないんですね。直交方向に積み上げることができるので、真四角ではない、複雑な形状の住宅にすることができるんです。
寺田|建物がデコボコしていると、建物の表面積が増えて建材が余分に必要になりますし、設計も施工もむずかしくなります。その分、建設費用が高騰してしまいます。街中のビルなどが真四角なのは、そのためです。
一方で、繰り返しになりますが、Archipelagoはユニットの数だけで価格が決まります。直交方向に積み上げて、どれだけデコボコした形にしても、価格は変わらないのです。独創的な住宅が、一定の価格で実現できます。
寺田|理想の暮らしと住宅を実現する、もっとも効率的な方法が、Archipelagoなのです。
Archipelagoは研究開発が続けられているからつねに最新
寺田|いま、住宅は一生に一度の買い物だと考えられていることが多いので、100年使い続けられる住宅が求められていますが、実際はどうでしょう? 20年後に世界が変わっているかもしれませんし、建ててしまった住宅が足かせになって人生が左右されてしまうこともあるでしょう。
たとえばスマートフォンは、みなさん数年おきに買い替えますよね? それは新しい技術が生まれて、電話の機能が向上しつづけているからです。
寺田|長く使い続けられることを想定すれば、技術は進化し続けているので、最新技術を取り入れにくいのです。
Archipelagoは、プロダクトとして、スマートフォンのように研究開発を続けます。世の中が進化するスピード感で、住宅を改良し続けます。Archipelagoを購入されるときにはその時の最新の技術が取り入れられていて、適切なメンテナンスを受けられます。前回 » ローコストであたらしいライフスタイルを生み出す、動く住宅「Archipelago」で触れたように、Archipelagoはローコストなうえ、必要なときにユニットを買い足すことができます。そのときも最新技術が取り入れられた高性能な住宅として購入してもらうことができるのです。
寺田|たとえば、一般的な住宅性能を考えるときに重要になる性能は断熱性能です。これまではどのような断熱材をどのように施工するかで断熱性能が左右されていましたが、Archipelagoは「真空断熱」の採用を予定しています。これは冷蔵庫に使われるようなもので、これまでの住宅の断熱性能と比べると圧倒的に高性能です。こうした研究開発を続けることで、品質の安定にも繋がります。
寺田|さまざまな人が、さまざまな住宅を楽しむことができる。いわゆるコンテナ建築は、基本的に真上に同じ方向に積み上げることしかできないんですね。家を建てる事が人生の目的ではなく、豊かな人生を送る事こそが、人生の目的ですよね。Archipelagoの可能性は、これから広がっていくのだと思います。